「ホテルまでどう来られました?」「どのくらいかかりました?」席についた時用に持っていた質問カードを次々と切っていく。場を繋ぐために仕方がない。どんどん手札がなくなって、焦る様子が自分でもわかる。受け答えもそこそこにしていると、ついに名前を呼ばれた。「こちらへどうぞ。」案内されて席に着くがまだドキドキは止まらない。
「はじめまして。もりおと申します。今日はお忙しいところありがとうございます。」「それさっき言いませんでした?」彼女が微笑みながらツッコミを入れる。「あ。そうですね。言いました。かなり緊張してます。」こちらも思わず笑って答える。何か張り詰めていたものが破けた。そう感じた瞬間だった。
緊張していますと開き直ったおかげか、そこからはすんなりといろんな言葉が出てくる。1つ気になったのは、会話がほぼこちらからの質問になっていたことだ。確かに一問一答のような想定問答は考えていた。だからといって、何の脈略もない質問を次々と浴びせるのは単なる取り調べと変わらない。
ふと感じたことを聞いてみた。「ひょっとして人見知りとかします?」「そうなんです。私かなりの人見知りです。」「そう見えないですね。」「よく言われますけど人見知りなんです。」会話がぎこちなくなるのはこれが原因?なのか。数問終わると飲み物に口をつけることの繰り返し。いつの間にかこういう流れになっていた。
お見合い前の自分の理想では、終わったらお店を変えてご飯でもと思っていたものの、全くそんな雰囲気はない。会話が途切れたときの合間はなんとか頑張って次に繋げようとするが、気の利いた一言も出てこない。
ホテルから出ながらの話で、ホームは違うが帰る駅まで同じだったことがわかったため、せめて見送れるところまで見送ろうと思った。ところが。頭ではそう思ったのに体がしてはいけないと言っているような気がした。
「ごめんなさい。僕は切符を買うので先に行っていて下さい。」切符はすでに持っていたがとっさに下手な嘘をついた。やがて彼女は階段を上がっていった。姿は見えなくなった。僕は一本電車を見送るまで、切符売場あたりで時間を潰していた。
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