「失礼ですがあいさんですか?」「そうです。もりおさんですか。遅くなってすみません。」慌てて彼女が答える。写真で見た印象とは少し違うもののやはり彼女だった。会ってみると女性が写真と印象が違うのはよくあることらしい。女性から見れば男性も同じく写真と違うよと思うものなんだろう。
「はじめまして。もりおです。今日はありがとうございます。そこのラウンジでお茶でもしましょうか。」ほぼ棒読みだった。これが役者のセリフなら舞台から存在そのものを消されるレベルだと思う。歩いて1分もかからないはずなのに、喫茶までの歩みが長い。その間何を話していいかもわからない。彼女から話しかけてくる気配もない。空気がなんだか重い。
ラウンジにやっとたどり着く。まだ始まってもいないのに、ちょっとした試練が訪れた。一見空きテーブルがあるように見えた席は、実はすべて予約済み。お茶を飲む以前に席がないのだ。この日は大安吉日。結婚式の参加者と思われる人達用に、ラウンジは予約ですでに埋まっていたのだった。仕方なく2人並んで待合用の椅子で待つ。
時間がありすぎてホテルを見回っているのになぜ気づかなかったんだろう。人目をはばからず頭をかきむしりたい。激しい後悔に襲われる。これからどうすればいいの??気持ちや表情を悟られないようにしたもののかなり混乱している。
「混み合ってますね。」座れた安堵感からかやっと自分から言葉が出た。「そうですね。」彼女が答える。相談所で話を聞いた限りでは、ラウンジが満席の場合どうするか。なんてアドバイスは一言も出なかった。どこから話そうか?何を切り口にする?頭の回転が完全に止まる。再び重い空気が自分にのしかかった。
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